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2009-01-26

宮沢賢治選書 

宮沢賢治のイメージを打ち壊す、決然たるメッセージ。

詩集など普段はほとんど読まないのですが、伊坂幸太郎氏の『魔王』に引用されていた
「生徒諸君に寄せる」の全文を読んでみたかったので。

『魔王』でも評されていましたが、なるほど、詩というよりはむしろ檄文のような。
読む人の心を煽り、そそのかす力のある詩です。
「生徒」だった頃はもう遠い昔、三十路過ぎのMでさえわくわくしてしまうほど。
そして、どこか空恐ろしくなるほど。
『魔王』の主人公が恐れていたのも分かりますな。

<生徒諸君
諸君はこの颯爽たる
諸君の未来圏から吹いて来る
透明な清潔な風を感じないのか>

オバマ大統領の、あの見事なスピーチのようでもあります。
人々を熱狂させる力がある。日本の片隅に住んでるMの心さえぐっと掴んでしまう。
でもやっぱり、どこか空恐ろしい。優れたリーダーとアジテーターは紙一重ですからのぅ。
余談ですが、先日テレビでオバマ氏のスピーチライターを務めている青年を見ました。
若くてビックリ。
どういう気分なんでしょうねぇ。一国の大統領が自分の考えた言葉を話し、それに国民が
心酔している。その光景をバックヤードから見ている、というのは。

心に残ったのはこの「生徒諸君・・・」と、やはり『魔王』に引用されていた「眼にて云う」、
そして最愛の妹であるとし子が亡くなったときに作られた「永訣の朝」でしょうか。



…。

えぇと、「永訣の朝」の一部を引用しようと思いましたが、どこを抜粋していいのか分かりません!
ぜひ本書を手に取られて再読されることをお勧めします。
この詩は確か教科書にも載っていましたが、今読み返してみると一層哀しみが胸に迫ります。
透明で鋭い、氷の結晶のような言の葉。
こんなに静謐で美しい詩だったんだなぁ、と改めて思いました。


宮沢賢治選書 (ミニブックシリーズ)宮沢賢治選書 (ミニブックシリーズ)
(2006/02)
世界の名詩鑑賞会

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2009-01-21

クリエイティブ・シンキング 創造的発想力を鍛える20のツールとヒント 松林博文

論理的思考と創造的思考は両立するのか。

私には珍しく、実用書をひとつ。
一時期、「うさうさ脳診断」なるものが流行ったことを覚えておいででしょうか?
腕を組んだり指を組んだりして、「うう脳」(右脳派)か「ささ脳」(左脳派)か
「うさ脳」(バランス脳)かを判断するアレです。
http://www.nimaigai.com/pc/home.php

で、コレによると私ったら見事に

「ささ脳」

なのですよ。
特に理論派というわけではないんですが、少々頭でっかちなところがあるのは事実。
直感的に物ごとを捉えられない、感覚的に動けないというのが、ちょっとコンプレックスなのです。

故に本書。
企画職以外の職種に就いている方にもおススメです。
仕事でアイデアを求められることは、どんな職種でもあるのではないでしょうか?
また、凝り固まった先入観をいったん反故にして、今までの自分の仕事(進め方や可能性など)を
見直してみるきっかけにもなると思います。

最近ロジカル・シンキングもののビジネス書が氾濫しておりますが、本書にはロジックに
偏ってしまうことによって陥りがちな落とし穴についても書かれています。

「本来、問題を解決する「手段」として使われていたはずのロジックが「目的」となってしまったり、論理という名のもと、言葉遊びや相手を論破することに熱中してしまうこともあります」

いる!こういう人いる。
相手を論破/否定することに汲々として、前向きで新しいアイデアを出さない(出てこない?)人。
もちろん、発想を現実に落とし込むためのロジックは必要ですよ。要はバランス。

当然ながら、これを読んですぐに頭が柔らかくなるわけではありません。
この本に書かれているのはあくまで「ヒント」であり、発想力が身につくかは自分次第。
ろうそくの炎を見つめるトレーニングや呼吸法などは一度試してみてもよいかも知れません。
<「成功」「失敗」にとらわれない>の項で紹介されていた、インテル社・ムーア氏のエピソードも
興味深かったです。
失敗はリスクではなく、失敗を恐れて自由な発想が出来なくなることこそリスクなのですね。

後半で説明されている「ツール」は有益だと思います。
ただし、読んだだけで分かった気にならず、一通りトライしてみることが肝要かと。
一番自分にあった方法を見つけたいですな。


クリエイティブ・シンキング―創造的発想力を鍛える20のツールとヒントクリエイティブ・シンキング―創造的発想力を鍛える20のツールとヒント
(2003/03)
松林 博文

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2009-01-18

四人の兵士 ユベール・マンガレリ

無名の兵士たちの、短くも温かな日々。

リーダー格のパヴェルと、無邪気なキャビン、おっとりとしたシフラ、
そして語り手である「ぼく」ことベニヤの4人の兵士。
ベニヤの幼くつたない口調で語られる、戦争中とは思えない温かな交流。
パヴェルと一緒にキャビンをからかい、シフラと一緒に沼のほとりに寝そべる。
4人で過ごす時間が、他愛なく穏やかであるほど切なくなってしまいます。
ベニヤは思う。
「みんながそれぞれ、いるべきところにいるような(略)、そんな気がしたのだ。そして冬が終わったからには、やがて再開されるであろう戦争からも遠くにいるような」

物語の途中からは、志願兵としてやって来たエヴドキン少年が仲間に加わり、
4人の他愛ない毎日をノートに書き留めていきます。
カモを撃ったこと、でも撃ち落とせなかったこと、馬が逃げてしまったこと。
パヴェルは言う。
「いいか、おまえにとって書くべきことは、出発したら二度とここには戻れないのを、みんなが悲しんでたり、いろんな思いを持ってるってことだよ」
そして4人は語り出す。少年が来る前の出来事も、ひとつ残らず。
この安らぎが束の間のものであると分かっているからこそ、彼らはこの日々のことを
記しておいて欲しいと願ったのですね。

あまりの穏やかさに、つい彼らが戦争のただなかにいることを忘れてしまいますが、
ラストでは否応なくその事実を痛感させられます。
共に過ごした時間が、静かに深めてきた絆が、呆気なく破壊されてしまう。その残酷さ。

それでもエヴドキン少年のノートには、4人で過ごした時間が確かに刻まれている。
ずっと一緒ではいられない、残酷な時間の流れを、確かにその上に留めることができたと
思うのです。


四人の兵士四人の兵士
(2008/07/24)
ユベール マンガレリ

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2009-01-12

ジョーカー・ゲーム 柳広司

ロマン無用!徹底的にクールなスパイ小説。

日本帝国陸軍内に設立された極秘諜報機関、「D機関」の暗躍を描くスパイ小説。
疑われた時点でスパイは終わり。
殺人と自死は最悪の選択肢。
そう叩き込まれたスパイたちによる活動には、派手なアクションも血まみれのバイオレンスもなし。
某有名スパイ映画とは対極にある作品でございます。

任務の多くは陸軍、あるいは国務省の腐敗と不正を暴くもの。
しかし、それは決して熱い正義感からではなく、あくまで「D機関」の活動を円滑に
進めるためなのですね。
本間軍曹は思う。
「この手の連中は、
――自分にはこの程度はできるはずだ。
あるいは、
――自分にはこの程度は当然できなければならない。
という命題を自分に証明するためだけに、文字通りどんなことでも、顔色一つ変えずにやってのける」
陸軍にも、国にすら帰属意識をもたず、信じているのは自分だけ。
強烈な自尊心と、それに見合うだけの常人離れした能力と強靭な精神力を持つスパイたちが
淡々と(いや、内心嬉々として?)任務をこなすさまは最高にクールです。
こんな人たちが身近にいたら嫌だけど。

そんなスパイたちの長たる人物が、「魔王」の異名を持つ結城中佐。
自身に有利な状況に持ち込むためには、身内の弱みを握ることも部下を利用することも躊躇わない。
そのふるまいは、まるで何手先も読んで駒を進める熟練したチェスプレイヤーのようです。
自分の命と一国の命運を賭けた任務すら、彼にとってはゲームなのでしょう。最高にクールです。
こんな人が上司だったら嫌だけど。

とらわれるな、と魔王は言う。
「目の前の事実以外の何ものかにとらわれた瞬間、即ちそれは貴様たちの弱点になる」
しかし、と飛崎は思う。
「とらわれないこと。
しかし、それは同時にこの世界の何ものも信じないこと――愛情や憎しみを取るに足りないものとして切り捨て、さらには唯一の心の拠り所さえ裏切り、捨て去ることを意味している」
スパイとして生きることの、本当の怖さと哀しさを感じます。

ロマン無用!と言っておきながら、それでも最後に部下に向かってかけた魔王の一言に
ロマンを感じてしまうのは、Mが甘ちゃんだからでしょうか。
魔王に叱られてしまいますねぇ。

「馬鹿か、貴様は」

と。


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2009-01-08

四畳半神話大系 森見登美彦

妄想が暴走する、四畳半の平行世界(パラレルワールド)。

私のファースト・森見作品は、本作を始めとする「妄想系」とは趣を別にする『きつねのはなし』でありました。
そのため最初は、なかなかこの世界観についていけなかったのですが、『太陽の塔』『夜は短し、歩けよ乙女』を経て、今やすっかり森見ワールドのファンに。

本作は、奇妙かつヘナチョコで、著しく爽やかさに欠ける「私」の大学生活を、端整な文体で生真面目に描いた
連作短編集。もしもあの時、他の道を選んでいたら・・・という誰もが一度は抱いたことがある夢想が、
4つの物語になっています。
繰り返される「あったかもしれない」大学生活。しかし、最終話で「私」は、結局どの道を選んでも大差ないことを悟り、
己の不毛な大学生活を受け入れられるようになるのでした。
Mの人生も――たとえどんな選択をしていても――恐らく今と大差ないのでしょうなぁ。
あの時こうしていたら・・・何て夢想は、それこそ不毛でありましょう。

登場人物の一人である樋口氏が言う。
「可能性という言葉を無限定に使ってはいけない。我々という存在を規定するのは、我々のもつ可能性ではなく、我々のもつ不可能性である」
「我々の大方の苦悩は、あり得べき別の人生を夢想することから始まる。自分の可能性という当てにならないものに望みを託すことが諸悪の根源だ。 今ここにある自分以外、他の何者にもなれない自分を認めなくてはいけない」

凄まじく後ろ向きなようだけど「もしかしたら、できた/できるかもしれないこと」に徒に思いを馳せるより、
「できないこと」を見つめた方が遥かに前向きなのかも知れませぬ。
痛烈な「自分探し」批判にも聞こえますね。

と、まぁこんな埒もないことを考えるよりも、この本を楽しむためには、ただひたすら森見ワールドに身を
委ねるべし。底抜けにくだらない大学生活を笑い、馬鹿馬鹿しいほど過剰な自意識に縛られる「私」に呆れ、
作中に漲る無駄なエネルギーを羨むべし。

それにしても、このチャーミングな発想(妄想?)はどこから湧いてくるんでしょう。
「ふわふわ戦隊モチグマン」とか「猫ラーメン」とか「秘密結社福猫飯店」とか。


四畳半神話大系四畳半神話大系
(2004/12)
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Author:本読み人M
8割方活字でできています。
ミステリや時代モノといった
エンターテインメント小説が大好物。
摂取した活字の感想を
吐き出して参ります。

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