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2009-03-31

蒼穹の昴(上・下) 浅田次郎

終焉の運命を辿る大国と、運命に抗う宦官の物語。

傾きかけた清国を舞台にした歴史小説。
西太后や李鴻章など、実在の人物が登場していますが、主人公である春児など架空の人物もおり、
また史実とは異なる点もあるので、あくまで浅田氏の解釈によるフィクションです。

壮大なストーリー、宮廷の絢爛豪華な描写、そして何より登場人物が魅力的。
特筆すべきは西太后で、“亡国の鬼女”というイメージの彼女がとても好意的に書かれています。
曰く、彼女は「新たな国に生まれ変わらせるために清を滅ぼす、という天命を背負った女性」であると。

作品中には、運命・天命という言葉が頻出します。そして登場人物はそれぞれに運命を背負っている。
国を滅ぼす運命。若い君主を支える運命。崩壊後の国を支える運命。
皆、星に導かれるように、告げられた運命どおりの人生を歩んでいくのです。

しかしこの激動の時代の中で、主人公である李春雲は、見事に己の運命を変えてみせます。
片田舎で餓え死に、朽ち果てるはずだった運命。
占い師である白太太は、その残酷な運命を告げることができず、思わず嘘をつく。
「お前は昴の星を持っている。いつか宮中の宝の全てを手中に収めるだろう」と。
しかし偽りの予言は希望となり、いつしか事実となっていくのです。
春雲自身の、天賦の魅力と強い意志と壮絶な努力によって。
陰謀と思惑が入り乱れる宮廷社会にも決して染まることなく、
誠心誠意をもって主である西太后に仕え、周囲の人々に接する春雲の姿がまぶしい。

「自分には王となる天命がある」とうそぶく栄禄に槍を突き付けた、李鴻章の言葉が印象的です。

「仮にそうであるとしよう。だが、今わしがこの槍を汝が咽に押しこめば、その天命とやらは
どうなる。運命などとは所詮そんなものだ。人間の力をもってしても変えられぬ宿命など、
あってたまるものか」

「蒼穹の昴」というタイトルが意味するのは、存在するはずのないもの。「神さえも造りえぬもの」。
この小説は、「神」が定めた運命を「人間の力をもって」造り変えた、一人の少年の物語なのです。


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2009-03-22

ララピポ 奥田英朗

社会の片隅で蠢く「ララピポ」たち。

「選りすぐりの負け犬たち」を描いた群像劇。それぞれの章がリンクした連作短編集になっています。
「ララピポ」とはA lot of peopleのカタカナ表記。
性描写がふんだんにありますので、このテのお話が苦手な方にはお勧めできません。
エロティックというよりも、滑稽という感じなのですが。

Amazonの商品説明に「最新爆笑小説」とあるんですが、この作品は決して爆笑小説ではありません!
共感も同情もできない登場人物たちに、苛立ったり、嫌悪感を覚えたり。
否。登場人物たちと同じ部分が自分にもあると感じるから、共感したくないのかもしれません。
不快感を覚えながらも、結局読み進めてしまいましたから。

『WHAT A FOOL BELIEVES』
対人恐怖症のフリーライター、杉山博(32歳)。学歴だけでしか他人や自分を評価できない男。
他人を蔑みながら、仕事もなく醜く肥え太っていく自分から目を逸らし続ける姿は、無様で滑稽で残酷。

『LIGHT MY FIRE』
専業主婦にしてAV女優、佐藤良枝(43歳)。荒れ果てた家、他人のような家族から目を逸らし続ける女。
二階にある「現実」を忘れるために、自慰に耽り、裕福な隣人に届く郵便物を覗きみる。その姿にぞっとする。

『GOOD VIBRATIONS』
デブ専裏DVD女優のテープリライター、玉木小百合(28歳)。男たちの欲望を逆手にとって、
自分の欲望を満たす女。男に従っているように見せて、ちゃっかり稼いでいる彼女はしたたかで、
ちょっと痛快。しかし、その内面は空虚で、どこか乾いている。
(他3篇)

目を閉じていれば何も見えない。
だから彼らはセックスをするのだ。


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2009-03-15

ライオンハート 恩田陸

出会いと別れを繰り返す、2つの無垢なる魂。

再読です。
以前読んだ時はそれほど面白いとは感じなかったのですが、読み直したら何かイイ。
時空を超えて出会う二つの魂。しかしいつも出会いは束の間で、再び長い別離を強いられることになる。
何とも歯がゆく切ない物語です。

「(略)私たちは何度も会っている。結ばれることはない。でも、離れた瞬間から、会う瞬間を待ち続けている――生まれる前も、死んだあとも(略)」

まぁ、こんなことを書くとベッタベタのメロドラマのようですが、(事実、恩田氏も「メロドラマを
書きたいと思っていた」とあとがきで述べていますが)決してそうはならないところは流石です。
恋愛小説でもありSFでもあり、サスペンスのようなエピソードもあり。
その多彩さには舌を巻くばかりです。

『エアハート嬢の到着』
全てを失った男が一人の美しい少女に出会う。出会いの喜びと別れの残酷さ。
二つの魂の絆の強さと、これから幾度となく繰り返されるであろう出会いと別れを予感させ、
思わず惹き込まれます。

『春』
幼い頃から頻繁に見ていた不思議な夢に現れる女性を、密かに想い続ける男。
その年月の長さに比べて、出会いの何と短くはかないことか。
二人が林檎の木の下で出会うシーンは、まさにミレーの絵画のように美しいです。

『イヴァンチッツェの思い出』
妻を殺した犯人を探してパナマに辿り着いた男。サスペンスフルな一篇ですが、
男と妻の、愛し合っていたからこそのすれ違いが切ない。
「すれ違い」というのもこの作品のテーマですね。
(他2篇)



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2009-03-08

2月読了本

格闘する者に○ (新潮文庫)』三浦しをん
漫画雑誌の編集者を目指し、就職活動を始めた可南子の格闘の日々を、
古風かつユーモアあふれる文体で描いたデビュー作。
著者の就職体験を基にして書かれたそうですが、
就職活動中の皆様なら共感する部分も多いのでは。Mにとっては大昔の話ですが。
一応「男女平等」の旗印の下に教育を受けてきた自分が、
初めて男女の間にある壁を感じた瞬間でしたねぇ。

酔いどれ次郎八 (新潮文庫)』 山本周五郎
初期の作品を集めた短編集。
とことんエンターテインメントに徹している感じです。
立ち回りの場面では表現が講談調になっていたりして、ちょっと新鮮。
ただ、解説でも指摘されていますが、筋書きがやや型どおり。
ニブいMでさえ先が読めちゃったりして。

猫と針』恩田陸
2007年に恩田が演劇集団キャラメルボックスに書き下ろした戯曲。
台本を基に単行本化したものなので体裁は脚本ですが、紛うことなき恩田ワールドでした♪
『茶と黒の幻想』を思わせるミステリ。舞台が観てみたかった…!
しかし、舞台の場合は時間の問題があるそうで、かなりコンパクトにまとめてあるのですね。
なので、活字として読むと物足りなさが残るのは事実。
ぜひ小説版で読んでみたいです。

その他
『金春屋ゴメス』 西條 奈加
『チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷』塩野七生
『ライオンハート』恩田陸


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本読み人M

Author:本読み人M
8割方活字でできています。
ミステリや時代モノといった
エンターテインメント小説が大好物。
摂取した活字の感想を
吐き出して参ります。

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