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2009-07-26

ネバーランド 恩田陸

いまだ消えぬ「男子」への憧れ。

「この雰囲気――この、共犯関係のような雰囲気。
(略)心の中にしまっておいたことを、口に出したくなってしまう」
4人だけが居残った高校の寮。
クリスマスイブの晩に始まったゲームで、それぞれが抱えていた秘密が徐々に明らかになっていく。

またまた再読です。
この作品、恩田氏のミステリが好きな方にはあまり人気がないようなんですが…
それは、これが「青春小説」だからですよ!(キッパリ)
私は恩田氏の「青春小説」が好きなのです。

恩田氏の描く学生(高校生)は出来すぎている、という意見をよく目にします。
確かに、この作品に登場する4人は皆、爽やかだし頭いいし冷静で、とっても大人。
自分の冴えない高校時代を思い返してみれば、こんなに出来た高校生がいる訳ない、ってことは
分かるんです。

が。
私は別に遠い昔を懐かしんでいるわけではないのです。これは憧れ、なのです。
「男の子って、いいなぁ」と思ったことのある女性は、少なからずいるんじゃないでしょうか。
登場人物たちは皆、この憧れをそのまま形にしたような男の子なのです。
こうなりたい、という未来への憧れではなく、こうありたかった、という過去への憧れ。
そして、それは“決して存在しない国”ネバーランドのように、絶対に手に入れることができない。
だから、こんなに惹かれてしまうのでしょうか。

恩田氏自身も、「出来すぎている」ということは承知の上のようですね。
以下、あとがきより引用。

「寮が舞台ということで、知り合いの編集者で某超有名私立高校で寮生活を送っていた男性に話を聞いた。
しかし、あまりにも美しくない実態に、参考にはしないことにした」

…やっぱり現実はそんなものなのね。
しかしそれでも。
彼らと、彼らの間の絶妙な距離感――干渉しすぎず、しかし時にずかずかと踏み込んでくるような――、
そして彼らが今まさにその只中にいる「人生の一瞬」をうらやまずにはいられないのです。


ネバーランド (集英社文庫)ネバーランド (集英社文庫)
(2003/05)
恩田 陸

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2009-07-21

骨は珊瑚、眼は真珠 池澤夏樹

孤独な魂に捧げる弔鐘。

初めて読む作家さんなのですが、好きです。冷静な筆致と、どこか現実離れした世界観と。
『眠る女』で描かれているのは沖縄の久高島で12年に一度、午年に行われる
“イザイホー”という儀式のようですね。(今では、もう行われてはいないそうですが)
この本を読む前に、たまたまテレビでこの儀式を撮影した古いテープを見ていたので、
なんだか勝手にシンクロシニティを感じてしまいました。
星新一のショートショートを思わせるもの(『贈り物』)から
日本昔話のようなもの(『鮎』;実際に存在する民話らしい)まで、多彩な作品が収められていますが、
どこか孤独で不安な作品が多いように思われます。

『最後の一羽』
「本当に彼は一族の最後の一羽だということを知らなかったのだろうか」
訳も分からぬまま、“騒々しい、二本足の動物”に連れ合いや仲間たち、狩場を奪われていく
“彼”の姿が哀しい。

『北への旅』
「狂わなかったのは自分を一所懸命に無自覚にしていたからだ」
片方の天秤には圧倒的な孤独。もう片方の天秤に乗っているのが穏やかな死なら、
大抵の人は迷わず後者を選ぶのではないでしょうか。
自分の意思で選んだ死を前に、抑えていた孤独に気づかされる。この恐ろしさと残酷さ。

『骨は珊瑚、眼は真珠』
「おまえはすっかり一人だ。
わたしを肉体から解き放って水に流すことは、そのままおまえをわたしから解き放つことでもある」
わがままな男が遺した、妻への最後の願いとは。
死んだ男の目線で語られる物語は、妻へのラブレターのよう。
形のないものを思い続けるのは難しいですが、それって理想であり究極。
男の考えに共感する人は多いのでは?私も散骨希望です!

『眠る人々』
「しかし、なんだって、われわれはこんなに満ち足りているんだろうな?」
一見贅沢にも思える不安感。
しかし、幸福を疑わずにいられないというのも哀しいかも知れません。

「自然って、もともとそんなに楽で愉快なものじゃなかった。
自然から抜け出したから、ぼくたちはこんなに一方的に満ち足りた生活を送ることになったんだ。
それって考えてみると、怖いよね」
実際こんな人が身近にいたらかなり面倒くさいとは思うのですが、
読み進めていくうちに主人公の不安感がじわりと沁み込んでくるような作品でした。
細々とした悩みやトラブルはあるものの、私自身も結構幸せな毎日を送っていますから。

「不安ってわかるかな。言ってみれば、自分がいるところにだけ光が当たっているみたい。
だけど、幸運という光が自分たちにしか当たっていないと、
その周囲の暗闇のところがどうなっているのか、わかるはずがないだろ」




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2009-07-13

告白 湊かなえ

その「告白」は、真実なのか。

うまい、とは思いました。
ラストは、やや強引なような気がしましたが、一人称で描かれているので読みやすいですし。
内容はやや重いですが…。

『藪の中』にも似た構成が見事。登場人物の印象がどんどん変わり、翻弄されます。
平等に生徒と接する、落ち着いた女教師か。感情を捨て去った復讐鬼か。
冷静な観察眼を持った聡明な少女か。「一家五人殺人事件」の犯人に心酔する、カンチガイ女か。
巻き込まれ、結果的に人を殺してしまった不運な少年か。
ちっぽけなプライドを満足させるためにだけ人を殺した卑小な男か。
愛情に飢えた孤独な少年か。自己中心的な、ただのマザコンか――。

一章めだけを読むと、被害者の母親である教師の気持ちは理解できるような気がするのですよ。
しかし読み進めてみると、だんだん気味が悪くなってきます。
犯人を憎むのは当然とはいえ、ここまで冷淡でいられるものなのかしらん?

人間の暗部を描いた作品は数あれど、前述の女教師を始め、ここまで登場人物の全員が人間味を
失っている作品は珍しいかも。
誰ひとりとして揺れていない。ひたすら自分を正当化し、他人を攻撃している。

しかし、これでもかというくらい人間の負の面が描かれていながら、それほど後味は悪くないと思います。
…というと誤解を受けそうですが、あまりに人間性が希薄なためか現実感がなく、良くも悪くも胸に残るものがないのです。

あ、でも第二章「殉教者」の裁判についての女生徒の考え方は興味深かったです。

「裁判は、世の中の凡人を勘違いさせ、暴走させるのを食い止めるために必要だと思うのです」

人は少なからず他人から称賛されたがっている、と。
そのための一番簡単な方法は悪いことをした人を糾弾することだと。
良いことをしながらストレスも発散できるわけだから、この上ない快感を得られるのではないかと。

(裁判制度がなければ)
「そして、一度その快楽を覚えると、ひとつの裁きが終わっても、新しい快感を得たいがために、次に糾弾する相手を探すのではないでしょうか。初めは、残虐な悪人を糾弾していても、次第に、糾弾されるべき人を無理やり作り出そうとするのではないでしょうか」

なるほど、とうなづかされました。


告白告白
(2008/08/05)
湊 かなえ

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2009-07-05

ねじの回転―February moment(上・下) 恩田陸

“歴史の意志”に翻弄される人々。

時間を遡れる技術を手にした人類が陥った絶滅の危機。
それを回避するため、国連は歴史を「再生」するプロジェクトを発動する――。

二・二六事件をモチーフにしたSF小説。
某ブロガー様の影響で、久しぶりに再読いたしました。

スピーディな展開と交錯する時間に頭が混乱しながらも、読むのが止められなくなる一冊。
予期せぬ闖入者。 プロジェクトの真実。
白昼夢のように現れる、「もうひとつの歴史」。
後半では、張り巡らされていた伏線が一気に機能し、からくりドミノの鮮やかな動きを見ているよう。

「歴史は自己を修復する」

歴史そのものが持つ、人知を超えた巨大な意志。
その存在を信じざるを得ないような、皮肉なラストも秀逸です。
時折不自然になるマツモトの言動も、結局は歴史という大きな流れにコントロールされたものなのでしょうか?

「よい歴史とは、いったい何なのでしょう」
「われわれが望む歴史だ」

そして、こんな未来人の傲慢に巻き込まれ、何度も歴史をやり直すことになった安藤大尉たちが哀しい。
自分たちの願いが打ち砕かれることを、既に知ってしまっているのに。
歴史背景をよく知らなくても充分楽しめますが、二・二六事件についてはウィキなどで史実を
ざっくり押えておくとよいかもしれません。
特に安藤大尉のプロフィールは、誠実で情に篤いという作品の印象そのまま・・・いやそれをさらに
補完するもので、彼の哀しみが一層胸に迫ります。


ねじの回転―February moment (上) (集英社文庫)ねじの回転―February moment (上) (集英社文庫)
(2005/12)
恩田 陸

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Author:本読み人M
8割方活字でできています。
ミステリや時代モノといった
エンターテインメント小説が大好物。
摂取した活字の感想を
吐き出して参ります。

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