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2009-08-29

天の瞳 最終話 灰谷健次郎

継いでいきたかった言葉と、子供たちへの想い。

灰谷氏の死去により、未完のままとなってしまった『天の瞳』。
作品は「さらに言葉を継いで」という言葉で、唐突に終わっています。

この作品の登場人物たちは、とにかく語る語る。そして考える。で、また語る。
人にも、抱えている問題にも真正面から向かいあい、常にディスカッションしているのです。
そこに“大人の事情”的なごまかしや逃げは一切なく、それが眩しくも、時々鬱陶しくも感じられます。
ひとつの問題に関して、とことん意見をぶつけ合うということが、特に大人になってからは
あまりありませんからな。何となくうやむやなままにしちゃったり。

それにしても、子供たちに対する灰谷氏の寛容さは仏クラス。
正直、狭量なMには納得しきれない部分もあります。
だって凶器で人を傷つけるような中学生に対して、ここまで親身になれないですよ。
主役である倫太郎を初めとする子供たちも「あんたたち、出来過ぎ!」ってくらいにいい子たちですし、
それ故、この作品を説教くさいと感じる人もいるかもしれません。

でも、そう、この作品は“灰谷先生”のお説教なのです。
ぶぅぶぅと口を尖らせながらも、耳が痛いなぁと居心地悪いをしながらも、うなだれて拝聴するべし。

「すぐ知ったかぶりをする。他人のいうことをきかない。なんでも他人のせいにする。それから・・・人をねたむ。そやのに自分はダメ人間だと口先でいってみる。そういうてるのに、すぐに見栄を張っているって。
みんなオレのことや」

・・・みんなMのことや。
やわらかな大阪弁が、グサリと胸に刺さります。


天の瞳 最終話 (角川文庫)天の瞳 最終話 (角川文庫)
(2009/07/25)
灰谷 健次郎

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2009-08-25

【映画】落下の王国

観たいな~と思いつつ、観損ねてしまった作品。DVDにて鑑賞です。

あらすじ(アミューズCQNホームページより引用):
時は1915年。映画の撮影中、怪我を負い病室のベッドに横たわるスタントマンのロイは、
追い討ちをかけるように恋人を主演俳優に奪われ、自暴自棄になっていた。
そこに現れたのが、腕を骨折して入院していた5才の少女・アレクサンドリア。
きっかけは、少女を操るためだった。ロイは動けない自分に代わって、自殺するための薬を薬剤室から
盗んで来させるべく、アレクサンドリアの気を引こうと、思いつきで6人の勇者が世界を駆け巡り、
悪に立ち向かう【愛と復讐の冒険談】を聞かせ始める。


とにかくアレクサンドリアが理屈ぬきに可愛いです!
まるまるとしたほっぺも、英語が分からないときの「?」な表情も。
そして、映像が素晴らしく美しい。CGを一切使っていない、と聞いてたまげました。
ただひたすら映像に酔う、というのもこの作品のひとつの鑑賞方法かと。
しかしながら我が家のちっこいテレビでは、この美しさとスケール感を堪能することができず...
やっぱり映画館のスクリーンで観たかったです。うぅ。
ストーリーの方は、それほどぐぐっと惹きつけられるものはありませんでしたが、楽しめました。

終盤、絶望の中にあるロイが語る物語は、何だかもう救いようのない感じになってきますが、
最後の最後でふんばりを見せてくれます。
「(物語の登場人物を)殺さないで!」というアレクサンドリアの叫びは、
ロイに向けられた「死なないで!」という叫びでもあり。
混じりっけなし、透明で無垢なアレクサンドリアの魂に触れて、ロイの魂は救われたのですね。

追記:
最優秀演技賞は、おサルのウォレス君に。
名優です!

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2009-08-16

神の守り人(上・下) 上橋菜穂子

己の闇を見据える靭さ。 

人買いの手から幼い兄妹を助け出した女用心棒バルサ。
陰謀が渦巻く中、バルサは一国を揺るがす力を秘めた少女アスラを守り抜くことができるのか――。

1作目から読み続けている「守り人」シリーズも5作目。
上橋氏もあとがきで書かれているように、主人公バルサのプロフェッショナルな生き方が好きなのです。
その一方で彼女には、殺されかけている子供を見捨てることができない優しさもある。
しかし、それも単なる一時の甘い感情ではなく、手を出したからには最後まで見届けるという
覚悟あってのこと。

「責任をとるというのは、殺す、ということだ。止められぬ時がきたら、殺す、といっているのだ。
きっと、バルサもおなじことをいうだろう。
おれは、なにも起こらぬうちに、アスラを殺すのは、ゆるせない。」

バルサはまた、自分の醜い部分を自覚し、それでもなお凛として立っていることができる女性でもあります。
心の奥にある醜い闇を知っているからこそ、同じような闇に引きずり込まれそうになっている
アスラを放っておけない。

「あの子は、心の底で気づいている。憎しみに駆られて人を殺したこと。狼を殺すことで強さを実感し、
その強さに酔っている自分の、おぞましい闇に」

バルサはアスラの持つ力を怖れながらも、決して彼女を見捨てず、アスラという一人の人間に対して
誠実に向かい合います。
幼いころから厳しい環境で育ってきたバルサは、その生き様でアスラに進むべき道を示す。
それは口先だけの説教や小手先の呪術などよりも強い説得力を持ち、
だからこそ最後の最後でアスラの心を動かすことができたのだと思います。

幼く頼りなかった少女が、最後に見せる強い意志に打たれました。
切なくも、微かな希望が見えるラストも良かったです。


神の守り人〈上〉来訪編 (新潮文庫)神の守り人〈上〉来訪編 (新潮文庫)
(2009/07/28)
上橋 菜穂子

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神の守り人〈下〉帰還編 (新潮文庫)神の守り人〈下〉帰還編 (新潮文庫)
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2009-08-15

ペットシッター

ちょっと近況を。

私ただ今、海外逃亡中の友人のペット、Mダックスのクロスを預かっております。
200908cross.jpg
「目線はおやつにロックオン」

友人(&クロス)とは、かつてルームシェアをしていたので、クロスもなついてくれてます。
友人が旅行に行く度に預かってますし、世話をすることには何の問題もないのですが・・・。

いかんせん、このクロス、大変な甘えん坊で。
友人の会社にも毎日出勤しているという飼い主べったりな子で。
留守番をさせようものなら(Mの会社には連れて行けませんので)、帰宅時に猛抗議を受けるのは必至。
そのままPCに向かおうものなら、この通り。 
200908pc.jpg
「PC画面より俺を見ろ」

重いから、どいて・・・。

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2009-08-10

家守奇譚

この世ならぬものに注がれる、優しい眼差し。 

死んだ友人の家に、家守として暮らすことになった「私」。
ある日、掛け軸の中から死んだはずの友人が現れて・・・。

ゆるゆると過ぎていく「私」の日常が、静かな筆致で淡々と描かれているだけなのに、
なぜか時々、手にとって読み返したくなる一冊です。
初読のときは、それほど印象に残った作品ではなかったんですけどねぇ。

主人公はお世辞にも活動的とは言えないうえ、大事件は何も起こらないので
(いや、河童が流れてきたり、山のヌシが訪ねてきたり、庭で龍が孵ったりはしているのですが)、
退屈に感じる人もいるかもしれません。
幻想小説が苦手な方には、あまりオススメできませんねぇ。

「ほんの100年ほど前の物語」なのに、どこか懐かしい。由緒正しき日本のファンタジーです。
人と怪が、それなりに共存している。
鬼も河童も、まぁ何となく受け入れちゃう、という日本らしいいい加減さというか、
妙なおおらかさが心地よいのです。
主人公である「私」は、時代の流れに乗り切れない浮世離れしたタイプ。
やはり人と怪の住まう世界が近しかった、古きよき時代を愛おしんでいます。

「文明の進歩は、瞬時、と見まごうほど迅速に起きるが、実際我々の精神は深いところで
それに付いていっておらぬのではないか。鬼の子や鳶を見て安んずる心性は、
未だ私の精神がその領域で遊んでいる証拠であろう」

しかし、「私」が彼らの住まう世界に行くことは決してありません。
素晴らしい風景、格高い人々、瑞々しい葡萄。
そんな美しいものに満たされた世界で生きることを、「私」はきっぱりと拒むのです。

「私は与えられる理想より、刻苦して自力でつかむ理想を求めているのだ。こういう生活は
――私の精神を養わない」

人ならぬものたちを愛しながらも、自身は俗世で細々としたことに煩わされながら生きることを選ぶ
「私」の姿勢が清々しい。

そして何より!
本作の準主役である(はずの)仲裁犬・ゴロー君の可愛らしいことといったら!
Mのハートを鷲摑みにしてくれました♪全く犬にしておくには勿体ないほどの器です。
犬好きの方も、ぜひご一読を。


家守綺譚 (新潮文庫)家守綺譚 (新潮文庫)
(2006/09)
梨木 香歩

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2009-08-02

7月読了本

Q&A』恩田陸
Q&Aだけで物語が進行していく構成がスリリング。
ショッピングモールで起きた、とある重大死傷事故のことを語りながら、
関係者たちはやがて自身の心中を語ることになります。
息子夫婦への憎しみ、不倫の関係、元妻への殺意、事件の真相、詐欺の告発に罪の告白。
次々に提示される謎に引き込まれるが、Q&Aが終われば、もう「その後」は語られることはない。
事故についても、結局はっきりとした真相は提示されないまま。
動機と回答がきちんと用意されているミステリではなく、
現代に流れる不安感や不信感を描いた群像劇です。
ラストはいきなりSF的になってしまったのがやや興ざめでしょうか。
うーん、信者の1人に語らせるとか、何か他のやり方で見せてほしかったような。

前巷説百物語 (C・NOVELS BIBLIOTHEQUE)』京極夏彦
京極堂シリーズに並んで大好きなこのシリーズ。
先の「後巷説百物語」は百介の昔語りという体裁で少々寂しかったのですが、
本作では、おなじみの面子の若かりし頃を垣間見られるのがうれしい。
何しろ又市が若い!青い!こんな青臭い又さんも、なかなか新鮮でよいですな。
複雑に絡み合い、時には入れ替わり、時には境界さえ曖昧になる善と悪。
それを口八丁手八丁で八方丸く収めるのが損料屋の仕事。
仕掛けの内容は少々荒唐無稽な感じもありますが、
爽快感は同シリーズの他作品に劣ることなく、十分楽しめます。
堅気の世界と闇の世界をふらふらしていた小悪党の彼が、
闇の世界で生きていくことを決める『旧鼠』はちょっと切ない。
『寝肥』での音吉とおもとの関係性や、『二口女』縫の心情など、イマイチ腑に落ちない部分もありましたが。
…ああ、またシリーズを最初から読み直さなきゃ!

粗にして野だが卑ではない―石田礼助の生涯 (文春文庫)』城山三郎
78歳で財界人から初めて国鉄総裁になった石田礼助氏の伝記。
氏の一本筋の通った生き方は素晴らしく、現代にもこういう人がいればと思わされますし、
歯に衣着せぬ物言いや、物おじしない堂々たる態度などは確かに格好いいのですが、
私は“優秀なビジネスマン”以上のものはあまり感じられませんでした…。
しかし出版当時、流行語にもなったという「粗にして野だが卑ではない」というタイトルは秀逸ですよね。
Mもかくありたいものです。

その他
『君はポラリス』三浦しをん
『骨は珊瑚、眼は真珠』池澤夏樹
『家守奇譚』梨木香歩
『天の瞳 最終話』灰谷健次郎


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Author:本読み人M
8割方活字でできています。
ミステリや時代モノといった
エンターテインメント小説が大好物。
摂取した活字の感想を
吐き出して参ります。

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