--------

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2009-10-25

赤ひげ診療譚 山本周五郎

弱き人々に注がれる、温かなまなざし。

タイトルだけは知っていた、この作品。
貧しい人々に慕われ、愛されている「赤ひげ先生」が主役の、人情物語なのだろうと勝手に思っておりました。
しかしながら、「赤ひげ」こと新出去定は、ぶっきらぼうで診察も乱暴、
こうと決めたことは問答無用に押し通す、お世辞にも愛され系とは言い難いお人柄…。
しかし時折、見習い医師の保本にこぼす言葉は、人間に対する尊敬と深い愛情に満ちています。

「医術がもっと進めば変わってくるかもしれない、だがそれでも、その個躰の持っている生命力を凌ぐことは
できないだろう」

巻末の解説にもありましたが、この言葉も決して諦観ではなく、人間の生命力に対する畏怖の念。
医学で人を救いたいと願えば願うほど、その限界が見えてしまうものなのかも。
そういえば本間先生(@『ブラック・ジャック』)もおっしゃっていましたっけ。
「人間が生き物の生き死にを決めるなんて、おこがましいとは思わんかね」と。

そして彼の目は、常に弱く貧しい人々に向けられています。
もちろん、貧=善なんてことはなく、むしろ貧しさゆえに非道なことをやってのける人間もいるわけです。

「人間ほど尊く美しく、清らかでたのもしいものはない」
「だがまた人間ほど卑しく汚らわしく、愚鈍で邪悪で貪欲でいやらしいものもない」

憤りながら、それでも人々のために持てる限りの力を尽くす赤ひげ。
保本はそれを「贖罪のようだ」と感じ、赤ひげも自らの過去について「盗み、裏切り、友を売った」と
意味深な言葉をこぼしています。
・・・が、詳しいことは一切語られず、ほったらかし。ええええ…。

赤ひげの人となりが、あまり掘り下げられていないのですよね。
というのも、この作品は医師としての自分に目覚めていく1人の青年の成長譚であり、
タイトルこそ『赤ひげ…』となっていますが、主人公は見習い医師の保本くん。
許嫁に裏切られ、おまけに望まない職場に配属されて、すっかり不貞腐れている若造です。
この子、正直カワイクない。(超主観)
赤ひげに反抗していた(中2か!)かと思うと、あっさりなついちゃったり。
赤ひげの姿は、あくまで彼の目線から描かれていて、それが少し物足りないのですよね。
これは語り手である彼に、あまり魅力を感じなかったから、というのもあると思います。うーむ。


赤ひげ診療譚 (新潮文庫)赤ひげ診療譚 (新潮文庫)
(1964/10)
山本 周五郎

商品詳細を見る


↓ブログランキングに参加しています。皆様の温かな1ポチを!
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

↓もひとつおまけに。
スポンサーサイト

theme : ブックレビュー
genre : 本・雑誌

2009-10-18

木洩れ日に泳ぐ魚 恩田陸

はがれていく欺瞞。その先にある真実と失望。

旅先で死んだ一人の男――殺したのは彼か、彼女か。
1対1の息詰まる密室推理劇です。

恋に落ちた相手が、実は幼いころ生き別れた兄弟だった!という昼メロ設定が、
見事なサスペンスになっています。
決してトリッキーな内容ではなく、ただ自分の過去を遡り、相手――今までよく知っていると思っていた
はずの――を冷やかな目で観察し直すことで、事件の真相が明らかになっていくというストーリー。
男のずるさと女の怖さが、とてもシビアに描かれています。

女のひとの怖さって、暴力的なものを伴わないからこそ余計に怖いですよねぇ。
ユーミンの『真珠のピアス』ばりに、そっと自分のピアスを別れようとしている男のカバンのポケットに
忍ばせておく、とか。
キャー、怖い!でも何か分かる!!

この作品には随所に、恩田陸の「女論」ともいうべき文章が見られます。
刺さりました。グサッと。

「女は過去を断ち切ることのできる生き物。(略)むろん、過去を引きずってしまう女もいるし、
私の中にもそういう女はいる。(略)しかし、私の場合、普段はそういう女には別室にいてもらう。
彼女には、時間があってゆっくり自分を憐れみたい時のゲストとして待機していてもらい、
たまにリビングに呼んで、思う存分自己憐憫に浸る。女には、自己憐憫という娯楽があるのだ。」

またある時には、女の“嫉妬”や“疑惑”という醜く荒々しい感情を、執拗に押し寄せる波に
例えています。

「もうすぐだ。もうすぐ、この波はあなたのところに届く。
もうじきこの波はあなたの足元を洗い、あなたは愕然とする。やがてあなたは気付くのだ。
女の居場所が本当はこの海の中であったと。海の中でもがき、溺れ、水を飲み、時に漂い、
泳いだり潮の流れに逆らったりする営みこそが、自分の持って生まれた性の本質なのだと。」

この作品に限らず、恩田氏の描く人物は皆クレバーですよね。男も女も。
冷静で、どこか冷たくも感じられるんですが、Mはそこが好きです。


木洩れ日に泳ぐ魚木洩れ日に泳ぐ魚
(2007/07)
恩田 陸

商品詳細を見る


↓ブログランキングに参加しています。皆様の温かな1ポチを!
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

↓もひとつおまけに。

theme : ブックレビュー
genre : 本・雑誌

2009-10-12

図書館の神様 瀬尾まい子

緩やかに溶けていく心。

ガチガチに固まっていた心が、ある日パッキリと折れてしまった。
「清く正しく」生きてきた主人公・清の緩やかな再生の物語です。
同級生を自殺に追いやってしまった、という重い過去を持つ彼女。拭いきれない罪悪感と贖罪の念。
しかしながら作中に漂う雰囲気は、ぽっかりと明るく、あたたかです。

傷つき、投げやりになっていた彼女は、束の間の安らぎをくれる不倫相手と優しい弟、
大人びた教え子に囲まれて、少しだけ人を許すことを覚え、再び歩き出す力を得るのです。

「きっぱりさっぱりするのは楽じゃん。そうしてれば正しいって思えるし、実際間違いを起こさない。
だけどさ、正しいことがすべてじゃないし、姉ちゃんが正しいって思うことが、いつも世の中の正しさと
一致するわけでもないからね」

「怒りすぎるから頭痛になるのですよ」
「何か間違ったこと言ってる?って、そんな堅苦しいことを言ってるから頭痛になるのですよ。
そうやって正しさをアピールすると、体力を消耗しますよ」

あらヤダ。
私も時々怒り過ぎて頭痛くなってます。耳が痛いわ。
私は清ほど清くも正しくもないけれど、頑固で融通が利かないところは似ているかも知れません。
「こうあるべき」みたいな考えが、どっかにある。
うわー、我ながら何て面倒くさい性格…。


図書館の神様 (ちくま文庫)図書館の神様 (ちくま文庫)
(2009/07/08)
瀬尾 まいこ

商品詳細を見る


↓ブログランキングに参加しています。皆様の温かな1ポチを!
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

↓もひとつおまけに。

theme : ブックレビュー
genre : 本・雑誌

2009-10-08

【映画】五右衛門ロック

ゲキ×シネ作品を観るのは、これが2回目です。
新感線☆RX『五右衛門ロック』オフィシャルサイト ←音出ます。注意。

あらすじ(シネマトゥデイホームページより流用):
役人・岩倉左門字(江口洋介)に捕えられ、釜ゆでの刑に処された大泥棒・石川五右衛門(古田新太)。実は、その葬儀を仕切る真砂のお竜(松雪泰子)の手引きで生き延び、南の果てにあるという神秘の石“月生石”を求めて船出する。しかし、彼らを追う左門字もろとも猛烈な暴風雨に襲われた五右衛門たちは、南の島に流れ着き……。


いやはや、なんてド派手なエンターテインメント!
音楽と演者が作り上げる世界に、どっぷり浸りきった3時間半でした。
そしてこの豪華な俳優陣!古田新太さんをはじめ、北大路欣也さん、松雪泰子さん、江口洋介さん、
森山未來くん…この面子を見ただけでワクワクしてくるではありませんか♪

劇団☆新感線の看板俳優である古田さんの存在感はさすがで、余裕すら感じられます。
まるで金田一シリーズのような変装シーンは、2回とも吹きました・・・。
松雪さんの艶やかさは不二子ちゃんばり。
したたかで自分の欲望に忠実、でも惚れた男のためなら命も張れちゃうお竜姐さんがカッコいい!
森山未來くんは、三枚目のオトボケ王子から悩めるシリアス王子まで、色々な表情を見せてくれました。
おまけに見事なダンスまで!

うさんくさいスペイン商人を楽しげに演じていた川平慈英さん、チャーミングな銭形警部キャラの江口洋介さんも良かったですし、濱田マリさん×橋本じゅんさんのおバカ夫婦っぷりもキュート!
ふんだんに盛り込まれたタタラ国×バラバ国の殺陣も迫力満点!
あぁ何かもう見所がありすぎて、どこに注目していいのやら。
っつーか、この物語はちゃんと収束するのか!?

…で、北大路欣也さんですよ。おいしいとこ全部、かっさらっていきましたよ。
もう出てきた途端に「王」なんですもの。風格ある佇まいと覇気溢れる目力。立ち回りさえも重厚で。
そして最後にカマル王子に見せる、父としての優しさ温かさ…もう役者が違います。
そりゃ、お竜もインガ(高田聖子さん)も惚れますわなぁ。

いや、堪能いたしました。上映時間3時間半(途中休憩あり)の大作ゆえ、料金は2500円と普通の映画よりも
張りますが、観て損はありません!

theme : 映画レビュー
genre : 映画

2009-10-04

9月読了本

つめたいよるに (新潮文庫)』 江國香織
21編の作品が収録された短編集。再読です。何度読んでも心に沁みるのが「デューク」。
犬という優しい生きものが、人間に向けてくれる愛情の深さに涙。
誰にでも訪れる“老い”と、大切な人との別れ。その哀しさを静かに描いた「晴れた空の下で」も名作です。

蠱 (集英社文庫)』 加門七海
日常に潜む恐怖を描いた「現代の怪談」。これまた再読です。表題作「蠱」の涼子が蟷螂なら、
「桃源郷」の京子は女郎蜘蛛のよう。一途に思いつめた女ほど恐ろしいものはありませんな。ぶるる。
嫉妬と疑心暗鬼が皮肉な結末を招く「浄眼」、信じてしまえば発動してしまう呪いの怖さを描いた「分身」も
恐ろしく、面白かったです。

その他
『鳩笛草 燔祭/朽ちてゆくまで』 宮部みゆき
『天切り松 闇がたり 第一巻 闇の花道』 浅田次郎
香水物語 (角川文庫)』 森瑤子
マリカのソファー/バリ夢日記 (幻冬舎文庫―世界の旅)』 吉本ばなな
『図書館の神様』 瀬尾まいこ
『赤ひげ診療譚』山本周五郎


↓ブログランキングに参加しています。皆様の温かな1ポチを!
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

↓もひとつおまけに。

theme : ブックレビュー
genre : 本・雑誌

プロフィール

本読み人M

Author:本読み人M
8割方活字でできています。
ミステリや時代モノといった
エンターテインメント小説が大好物。
摂取した活字の感想を
吐き出して参ります。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。