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2009-12-23

暗殺の年輪 藤沢周平

男に、時代に、翻弄される女たち。

うーむ、暗い。寂しい。やり切れない。
現代とは比べようもないほど、生きることがままならなかった江戸の女たちの姿を描いた短編集です。

「黒い縄」
無実の罪で追われる男と、その男を愛した女。
見えない悪意に、じわりじわりと追いつめられていく様がサスペンスフルな一篇です。
ラスト、一人とり残された女の姿が痛々しい。女性が自立して生きることが難しいこの時代、
意に染まぬ結婚をし、空虚な気持ちを抱えながら生きていくのであろう彼女の姿が、透けて見えてしまうから。

「暗殺の年輪」
息子の命を救うために身を売った母。
その母を自害にまで追いつめる息子に憤りを覚えるのは、Mが現代の女だからでしょうか。
最後に彼は「走って逃げる」という武士らしからぬ方法で罠から逃れるけれど、
彼の母は結局「武家の女」であることから逃げられなかったのですねぇ。

「ただ一撃」
ぼんやりした冴えない男が、実は剣の達人という設定が『たそがれ清兵衛』や『隠し剣』シリーズを思わせます。
しかし勝利と引き換えに失ったもの――嫁女の死――が、あまりに大きすぎて
前出の作品のような痛快さはありません。
彼女自身が腹を決めて選んだ道とはいえ…やり切れなさだけが残ります。

「溟い海」
広重に対する、抑えがたい嫉妬心を抱えた北斎がとった行動とは。
新しい才能に対する嫉妬や恐怖心というのは、程度の差こそあれ、誰にでもあるものだと思います。
その妬みや嫉みすらも、創作に昇華させてしまうのはさすが。
人間臭い北斎が魅力的ですが、この作品中にも男に翻弄された女が一人…。
登場のさせ方が象徴的で巧みです。

(他1篇)

暗殺の年輪 (文春文庫)暗殺の年輪 (文春文庫)
(2009/12/04)
藤沢 周平

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2009-12-20

【映画】THE WAVE

あらすじ:(goo映画より)
高校教師のベンガーは特別授業週間で独裁制について学ぶクラスを受け持つことに。
若くて生徒からの人気もあるベンガーは授業の一環として、生徒に独裁制を体験させようとある提案をした。
それは授業中に自分を指導者とした独裁制を行うというもの。最初は嫌悪感を示す生徒たちだったが、
やがてこれまでに味わったことのない一体感に興奮していく。
そして生徒たちは自らを「ウェイヴ」と名乗って異物の排除を行うようになり…。


これが実際に起きた出来事とは…。
信じられない。でも、こんなことはあり得ないと一笑に付すこともできない。
酒を飲み、パーティで踊り狂い、女の子とキスをする。
日本の高校生に比べると随分と大人っぽく見える登場人物たちも、やはりまだ子供。
人間関係、劣等感、家庭の不和、将来への不安などを抱えて、その内面はかなり不安定です。
そんな彼らに、「君たちのいるべき場所はここだ」と力強く示してくれる存在がいたら?
そこにいれば、不安も不満も忘れることができたなら?
皆、すがるようにして依存してしまうのではないでしょうか。

その極端な例がいじめられっこだったティム。
彼にはウェイヴが全てだった。他に彼の居場所などなかったから。
狂信的なまでにウェイヴにのめり込んでいく姿が、恐ろしくも痛々しい。
絶望的なラストには(悪意があって始めたことでないとはいえ)、何て残酷なことをしてくれたのかと頭を抱えたくなりますよ。
暴走族やチーム、ギャルサーも根底にあるものはウェイヴと同じなんでしょうな。
最近の若者は、上下関係のうっとうしさを嫌って暴走族に入りたがらないと聞きますが、
居場所を見つけられない、疎外感を感じている子たちは、Mが高校生だった時よりも増えているのではないかしらん。

さて、高校生の時のMならばどうするでしょう?波に呑まれるか、それとも波から逃れるか?
まず、教師を「~様」と呼べと言われただけで拒否反応を起こすと思うのですがねぇ。
その一方で、グループに所属することの安心感、団結することの楽しさも理解できるんですよね。
体育祭の時なんかは、皆でお揃いのTシャツを着ちゃってましたし。
だから「私は大丈夫」と言い切れない。だから、怖い。

おまけに。
最初の授業で、独裁が行われる条件として挙げられた「失業率の高さと貧困」。
まさにその条件を備えているのが、今の日本ではありませんか!No!
…幸か不幸か、独裁政治を布けるほどカリスマ性のあるリーダーはいませんが。
2009-12-12

悪人 吉田修一

“悪人”はどこにいる?

一人の女性が、出会い系サイトで知り合った男に殺された。
被害者と犯人、そして彼らを取り巻く人々を描いた群像劇です。
そこには、薄い人間関係や幸せへの渇望、孤独、空虚、匿名性の恐ろしさなど
今という時代の空気もまた描かれています。

被害者はかなり不愉快な女性として描かれているし、犯人である祐一も相当アブナい。
二人の周囲にいる人々も、多かれ少なかれ悪意や保身の気持ちを持っている。
なので、前半は読んでいてちょっとゲンナリさせられます。
しかし彼らは皆、決して“悪人”ではなく、どこにでもいるような平凡な人間なのです。
誰もが誰かでありうる。私は違うと思いたいけれど、私もこの中の一人なのかもしれません。

被害者を山奥の車道に置き去りにした大学生ですら“悪人”ではない。
人の気持ちも分からない、臆病で傲慢な、ただのおぼっちゃま。
恨みをぶつける場所を失った被害者の父親の姿は痛々しいですが、
明るく灯った理髪店のライトがあたたかな希望となっています。

そして事件の最中に出会ってしまった祐一と光代。
愚かなだけの逃避行を続ける二人の姿が、みっともなくも哀しい。
結局、犯人である祐一は、自分を“悪人”にすることで事件の終結を試みます。
少々自己犠牲的過ぎるように思いますが。
光代のことを考えれば、こうするしかないとはいえ、彼の肩を掴んで「いいの、それで!?」と
ガクンガクン揺すぶりたくなりますよ。

「どっちも被害者になることはできんやろ」

何ともやり切れない気持ちが残る、しかしミステリとしてはかなり秀逸な一冊です。

悪人悪人
(2007/04/06)
吉田 修一

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2009-12-06

11月読了本

平安妖異伝 (新潮文庫)
若き日の藤原道長が少年楽士とともに京の都を騒がせる怪異に挑む短編集。
『陰陽師』のような世界観はMのストライクゾーンど真ん中です!雅な雅楽器が色々と出てくるところが楽しい。
晩年の傲岸なイメージが強い道長も、作品中では誠実で爽やかな男として描かれています。

風来忍法帖―山田風太郎忍法帖〈11〉 (講談社文庫)
奇天烈な発想はさすがですし、しがない香具師たちが恐ろしい忍者に闘いを挑むという設定もM好みなのですが…。
主人公たちに最後まで魅力を感じられなかったため、どうにものめり込めず、途中でちょっと飽きました。うーむ。
彼らが命を懸けて守ろうとする麻耶姫の魅力もイマイチ理解できませんでしたし。

ほかに誰がいる (幻冬舎文庫)
ピュアな恋愛小説かと思いきや。恋、と呼ぶにはあまりに一方的で身勝手な想い。ほとんど妄想ですな。
物語は徹底的な一人称で進んでいき、壊れていく主人公の姿は、哀しいとか切ないとかいうよりひたすら不気味。
文章が美しく、端正なだけに余計恐ろしいです。

その他
『一歳の息子に届いた成功者100人からの手紙』
『「結果を出す人」はノートに何を書いているのか』
『三本線ノート術』
『悪人』
『ラットマン』

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本読み人M

Author:本読み人M
8割方活字でできています。
ミステリや時代モノといった
エンターテインメント小説が大好物。
摂取した活字の感想を
吐き出して参ります。

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