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2010-02-27

風に舞いあがるビニールシート 森絵都

絶対に譲れない、「大切な何か」。

「大切な何かのために懸命に生きる人たちの、6つの物語」
(amazonデータベースより)

その「何か」は人それぞれで、なかなか他人には理解されないものだったりします。
日本文学とか仏像なんて興味のない人には何の価値もないでしょうし、
捨犬の里親探しも、犬嫌いの人には偽善としか映らないでしょうな。

しかも彼ら自身、確信をもってその道を突き進んでいるわけではありません。
時に悩み、揺れる。
それでも「懸命にならずにいられない」という感じ。
面倒なんだけど、正しいことなのか分からなくなることもあるけど、
他の大切な何かを失ってしまうかも知れないけど、それでも。
その不器用なまっすぐさが、読む人を惹き付けるのかもしれません。

「器を探して」
気まぐれな女パティシエ・ヒロミに振り回される秘書の弥生。
結婚間近の恋人には「僕か、あの女か」と選択を迫られ…。
いいように振り回されているようで、しっかりと進む道を自分で判断し、選択している姿が痛快。
「食べる人が幸せになるようなケーキを」という夢、ヒロミのケーキ作りの才能と
それを確信した自分の舌に対する信頼…すべてが揺るぎなく、たくましい。

「犬の散歩」
捨犬の里親探しボランティアのために夜の仕事をしている恵利子。
ある日、客に「なんでそんなことやってんの?」と尋ねられ…。「何になるの?」と言われようと
「優雅なもんだ」と嘲笑われようと、恵利子は“犬のご飯”をものさしにして生きることを決める。
自分の無力さも、世界には他にも難題が山積していることも承知のうえで。
人は結局、自分のものさしでしか物事を量れない。私にとっての“牛丼”“犬のご飯”は何だろう?

「風に舞いあがるビニールシート」
難民事業に携わり、紛争の地に身を置くことを選んだ夫・エドとの結婚生活にピリオドを打った「私」。
その2年後、彼がアフガンで命を落としたという知らせを聞き…。
自分の小さな幸せ(結婚とか子供とか温かな布団とか)を投げ出しても難民をサポートしたいと考えるエドと、
常に厳しい環境にいる彼を小さな幸せで安らがせ、癒したいと願う「私」。
お互いを大切に思っているのに、分かり合うことができない二人の関係が切ない。

(他3篇)

風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)
(2009/04/10)
森 絵都

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2010-02-20

悼む人 天童荒太

死者との距離について考える。

事故や殺人などで亡くなった人の最期の場所を訪ね歩き、
生前のことを調べては死者を“悼む”静人の旅を描いた一冊。

最初に感じたのは、苛立ち。
その感情はしばらく読み進んでもなかなか消えず、読むのを止めてしまおうかと思ったほどです。
温かな布団の中で眠ることも、美味しいものを食べることも、人を好きになることも放棄して、
生活のすべて死者に捧げている彼の姿は理解の範疇を超えており、正直うす気味悪くさえ思えます。
見ず知らずの人間の死を悼んでばかりで、死を目前にした母親に顔も見せない静人の行動も、
ずいぶん矛盾したものに感じましたし。
そして、死者に対するMの姿勢(雑誌記者・蒔野の言葉を借りるなら「生きてゆくために仕方なく忘れたり、
眠らせておいたりする」ことや「人の死に多少なりと軽重の差をつける」こと)を
咎められているような気分になったから、かもしれません。

「亡くなった一人一人がこの世界に生きていたということを、できるだけ覚えていられないかと思ってる」

今際の際に静人の祖母が残した「おぼえてて」という言葉。
しかし時間とともに、薄れていく死者の記憶を一体誰が責められましょう。
だいいち自分のことをそんなに覚えててほしいものなのかな?とも思います。
死んでからもずーっと?親しい人ならまだしも赤の他人に?
父・鷹彦の言う通り「死んだ人ばかりを見つめていては、自分も、家族も、養えない」と思うのです。

ただ、そう思うのは、単に私が死を意識するにはまだ若く、
幸運にもそう多くの死に直接触れてこなかったからかもしれません。
10年後、20年後に再読したら、全然印象が違うんじゃないかしらん。

「いつかは親も亡くなる。(略)他人は簡単に忘れ去る。元々覚えてもいない。
だが、この〈悼む人〉だけは、きみのことをこの世で唯一の存在だったと覚えていてくれる…
それを無意味と言い切れるほど、きみは強いのか」

本書のあとがきで、作者は早世した友人がいることを書いています。
人は簡単に忘れてしまう生き物であり、生きている人間は、死んだ人間のためには生きられない。
そのことはよく分かっているうえで、自分とともに(あるいは自分の代わりに)
友人のことを覚えていてくれる存在が欲しかったのかも知れない…と、勝手に思いました。

好きな作品か、と言われると正直よく分からないのです。
しかし、苛立ったり、考えさせられたり、泣かされちゃったり、
何かと心乱される一冊であったことは間違いありません。

悼む人悼む人
(2008/11/27)
天童 荒太

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2010-02-14

君と一緒に生きよう

小さな命に差し伸べられた手。

「愛がなくては話にならない。が、愛だけでは救えない」

作家・森絵都がアニマルレスキューの現状を伝えるノンフィクション。
新聞に掲載されていたコラムだからか、一編一編はさほど長くなく、読みやすいです。
シビアな現状が、極力柔らかく、かつ感情的になりすぎずに書かれているという印象を受けました。
森氏も取材の際には、怒りやら苛立ちがあったと思うのですが。

「空前のペットブーム」と言われる日本で、年間40万頭の犬や猫が殺処分されているという現実。
森氏はその現場にもしっかりと立ち会っています。

「通常、殺処分の現場へ部外者は立ち入れない。(略)なぜそのような規則があるのかと尋ねたところ、
「あまりにもショッキングで見せられないため」との声も返ってきた」

恥ずかしながら、Mはほんの数年前まで、殺処分というのは苦しまないように安楽死させるのだと思っていました。
もちろん悲しい許せないことではあるけれど、眠るように、静かに息を引き取れるのだろうと。
TVで殺処分の様子を観て、悲鳴のような鳴き声に、すがるような瞳に、ショックを受けた覚えがあります。

とはいえ、保健所に持ち込まれた犬や猫たちをすべて救うというのは、ほぼ不可能に近い。
それでも手弁当で、持ち出しが増えることも厭わず、黙々と活動するボランティアの方たちには頭が下がります。
里親として引き取る場合にも、犬が病気や骨格異常を持っている場合もありますし、看護という問題もある。
実際問題お金もかかる…本当に「愛だけでは救えない」。

そもそも一人一人が自分の愛犬を責任もって飼っていれば、レスキューボランティアなんて必要ないんですけどね。
これって別に犬好きだけの問題ではないと思うのです。
責任を持って面倒をみられる人たちだけが犬を飼うようになれば、捨て犬や野犬、悪質なブリーダーの問題も解決するでしょうし、
特に犬に興味がない人や犬嫌いの人にも迷惑をかけることなく、うまく共存していけると思うのだけど。

巻末に収録された、奇跡的に命をつなぐことができた犬たちの穏やかな表情に、心救われる思いがします。

君と一緒に生きよう君と一緒に生きよう
(2009/03/27)
森 絵都

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2010-02-07

1月読了本

ダブル・ジョーカー』柳広司
帝国陸軍の諜報機関“D機関”の活動を描いた『ジョーカー・ゲーム』の続編。
その地に風景のように溶け込み、「死なない、殺さない」をモットーに任務を確実に遂行する様が、
とにかくスリリングで格好いい!
対抗心や肉親への信頼、そんな人間的な感情にとらわれた者が負ける非情な世界。
それでも「柩」でのラスト、そっと閉じられた遺体のまぶたにグッときました!

モダンタイムス (Morning NOVELS)』伊坂幸太郎
ネットワークによる監視、異端の排除。似た設定のものには『声の網』(星新一)がありましょうか。
「声の網」では、それらはネットワーク自身の意志によって行われましたが、
本作にあるのは、もっと曖昧で、もっと大きな意志。
あり得ない話ではないような気がして、興味深かったですけれど…長いな!
「魔王」と合わせたら結構な長さ。おまけに結構血まみれなので、
伊坂氏らしいスマートさで描かれているとはいえ、チトしんどかったです。

街の灯 (文春文庫)』北村薫
先日、直木賞を受賞した『鷺と雪』と同じベッキーさんシリーズの第一弾。
大正の時代、しかも主人公は上流階級のお嬢様という設定ゆえ、現実離れした華やかな世界が楽しめます。
ベッキーさんも格好よく、とても魅力的なキャラクターでしたが、ストーリーはあまり好みではなかったです…。
「仏法僧」では、やんごとなき方の持つ冷ややかさに、ぞっとしたり腹立たしくなったり。

その他
下中菜穂『紋切り型 花之巻』
宮部みゆき『楽園(上・下)』
森絵都『君と一緒に生きよう』
小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』

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2010-02-02

楽園(上・下) 宮部みゆき

罪の上に立つ“楽園”は、幻なのか。

娘が両親に殺害され埋められた16年前の事件と、それを幻視した少年。
「模倣犯」事件から9年。フリーライター・前畑滋子が事件の真相を追う。

殺された娘・茜は近所でも有名な非行少女。
非行、反抗期などという言葉を超えた行いを重ねる娘を、ついには殺めてしまった両親。
子殺しという許されない犯罪に手を染めたにもかかわらず、正直、Mは加害者である両親に同情してしまう。
もし自分が両親の立場だったら、同じことをするかも知れないとさえ思います。

だからこそ登場人物の一人が、滋子に向かって放った言葉が胸に痛い。

「身内の中に、どうにも行状のよろしくないものがいる。(略)そういう者がいるとき、
家族はどうすればよろしいのです?そんな出来損ないなど放っておけ。切り捨ててしまえ。
前畑さんはそうおっしゃるのですか?」

悪と決めつけて、すっぱりと切り捨ててしまうのは楽だ。でも、それでいいのか?と。
無関心過ぎたり過保護過ぎたり、本当にどうしようもない親も世の中にはいますけど、
大多数の親はごく普通の家庭で、当たり前の愛情をもって子供を育てているはずなのに。
なんでこうなっちゃうのかなぁと、かなりウツウツとした気分になりました。

そして結局、被害者の妹・誠子が知りたがっていた事件の“真相”は、母親に語られることで明らかになります。
しかし、そのことは決して彼女を救わない。
彼女はこれからも、自分が暮らしていた“楽園”が、
殺人という罪の上に成り立っていたという重い事実を抱えていくしかない。
両親の罪を「仕方がなかった」と納得したい気持ちと、「姉を切り捨てた」という罪悪感とともに。

「生きているー生き残った人間は、今を生きていかねばならない。
 過去を清算するために必要な理屈や説明を、自分で工夫して作り出して」

滋子が白日のもとに晒した“真相”とは一体なんだったのか…。
理不尽さとむなしさを感じます。

重い内容と、慎重に取材を重ねることで真相に迫っていくという設定のため、
正直、上巻を読んでいる時点で「長い!」と感じました…。
それでも、明るく温かな希望が見える(いささか出来過ぎかもしれませんが)
いかにも宮部みゆきらしいラストには、ホッとさせられます。

楽園〈上〉楽園〈上〉
(2007/08)
宮部 みゆき

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楽園 下楽園 下
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宮部 みゆき

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Author:本読み人M
8割方活字でできています。
ミステリや時代モノといった
エンターテインメント小説が大好物。
摂取した活字の感想を
吐き出して参ります。

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