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2010-03-30

キップをなくして 池澤夏樹

人の命と心を知って、少年は大人になる。

「キップをなくしたら、駅から出られない」
キップをなくしてしまったイタルは、“ステーション・キッズ”として数人の子供たちと一緒に、
東京駅構内の小部屋で暮らすことになった。

なんの予備知識もなく、図書館でホイッと借りた一冊。
児童文学ゆえ、以前読んだ『骨は珊瑚、眼は真珠』とは全く印象が異なり、始めは少々戸惑いましたが、とても楽しく読めました。
登場する子供たちが、良い子過ぎるのが少々気になりますけど。
子供の頃だったら、きっともっと夢中で読んでたな~。主人公のイタルくんは私と同い年ですし!

現実と隣り合ったファンタジーというのは、わくわくしますねぇ。
『ハリー・ポッター』に近いものがあるかも。
キングス・クロス駅9と3/4番線のように、今日も東京駅のどこかで、
ステーションキッズたちが通学するこどもたちを守っているのかもしれないと思わせてくれるのですよ。

また、この作品には自分を律すること、人のために働くことなど、大切なことが詰まっています。
そして「生きているものぜんぶの決まり」について。

「死んだものは元に戻らない。それは生きているものぜんぶの決まりだからって」

自分の死を受け止め、旅立ちを決めるミンちゃんが凛々しい。
弱々しかった彼女が、現実を受け入れた途端、ぐっと大人びて頼もしくなる。

「わたしがうろうろしているとママはいつになってもわたしのことしか考えない。
忘れてもらいたいわけじゃないけれど、わたしのことばっかりではいけない。だから、わたし、発ちます」

ミンちゃんのおばあさん(グランマ)が「人が死んだらどうなるか」について話すシーンが印象的です。
グランマの語りはとても優しくて、何だかMまで小学生に戻ったような気持ちで(何十年前かしら)、読みました。

「人の心はね、小さな心の集まりからできているの。(略)
だから人が何か決める時は、その小さな心が会議を開いて相談したり議論したりして決める」

死ぬとその小さな心(コロッコ)たちは、会議を開く。
「楽しいことも苦しいことも含めて、欲ばって、与えられた機会を隅から隅まで使って、生きられたかということ」について。
大切に生きることは死ぬ準備でもある、とグランマは言う。その準備がないと「会議は紛糾する」と。
うーむ、耳と胸が痛い。今もしMが死んだら、コロッコ会議は間違いなく紛糾するわ。

あぁ、返す返すも子供の頃に読みたかったと思える一冊でした。
(発行が2005年なので、どのみち無理な話なんですけどね…)

キップをなくしてキップをなくして
(2005/07/30)
池澤 夏樹

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2010-03-21

新世界より(上・下) 貴志 祐介

人の心に巣食う、傲慢と残虐。

人々が呪力を持つ世界。
一見のどかで平和なコミュニティの中で、子供たちは管理され、思考を徹底的にコントロールされていた…。
SFホラー。

1000ページを超える大作。ちょっと怯んでしまうほどのボリュームですな。
生物学や動物行動学を基に、緻密に組み上げられた世界観が見事。
前半はこの世界の説明にかなりの紙面を割いているため、やや中だるみを感じることもあるかもしれません。
しかし、上巻を読み終えれば、あとは一気に読めるかと。
前半部分が伏線となり、後半で怒濤の展開を見せることになるのです。

人間と、バケネズミと呼ばれる異種との闘い。
支配下にあったはずの彼らが突然反旗を翻し、攻撃を加えたことに人々は怒りますが、
むしろ、自分たちがずっと彼らに憎まれていたことに気づいていないのが怖いし、不気味…。
呪力を持つ自分たちを神から選ばれた存在と信じる人間たち。
その他の生き物を使役し、搾取することに何の疑問も抱かず、命を奪うことにすら何の痛痒も感じない。
この選民意識は、主人公である子供たちの言動にもちょいちょい見受けられて、
その度にモヤっとした不快感を残します。
それがラストにはハッキリとした不快感と恐怖に形を成すのです。

「この、下等な蛆虫が...よくも、人間を殺したな!」
「バケネズミに死を!」
「バケネズミに死を!」
「バケネズミに死を!」

仲間を殺された人びとは、凄まじい怒りとともにバケネズミを攻撃します。
かなり血みどろなので、苦手な方はお気をつけください。
どんどん明らかになっていくこの世界のグロテスクさと、人間が秘めた攻撃性の凄まじさに身の毛がよだちます。

闘いの後、「殺された人間たち全員に対しての、心の底の謝罪」を要求した主人公・早季に、
首謀者であるバケネズミ・スクィーラはこう答える。

「いいですとも」
「その前に、あなたがたが謝罪してくれればね。
あなたがたが、何の良心の呵責もなく、虫けらのように捻り潰した、我が同胞全員に対して」

何だかありきたりな感想になってしまうのですが……結局、一番怖いのは人間なのね。

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新世界より 下新世界より 下
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2010-03-14

猫を抱いて象と泳ぐ 小川洋子

広大なチェスの海に飛び込んだ、少年の一生。

小さなチェステーブルの下に潜り、からくり人形を操ってチェスを打つ「リトル・アリョーヒン」と呼ばれた少年の物語。

『博士の愛した数式』に通じるものを感じました。
ただひたすらに一つの道を歩き続けた人だけが持つ爽やかさ、とでもいいましょうか。
リトル・アリョーヒンがこだわるのは勝ち負けではなく、
いかに対戦相手とともに盤上に美しい軌跡を描き、そこに美しい物語を生み出すか。
彼の師匠であるマスターは語る。
「つまり、最強の手が最善とは限らない。チェス盤の上では、強いものより、善なるものの方が価値が高い」
「最強の道よりも最善の道を選びなさい」

現実にはいない女の子と、デパートの屋上で死んだ象だけが友達だった無口な少年が、
チェス盤ごしに多くの人たちと交わり、たくさんの言葉を並べるよりも深く分かり合っていく様子が温かく、心地よい。

もちろん単なるほのぼのストーリーではなく、いくつもの哀しい別れや残酷な出来事も経験することになります。
ラストがまた、とても切ないのですが、あまりに彼にふさわしい最期で、不思議と読後感は悪くなく、爽やかですらあります。
チェス博物館の片隅で、彼の残した棋譜は、無口な彼の生き様をひっそりと、しかし雄弁に語り続けるのでしょう。

いやぁ、それにしても「博士の愛した数式」でも思ったことですが、小川氏の編む文章の豊かさたるや。
チェスなんて全っ然分からないのですが、読み進めるうちに猛烈にチェスをやってみたくなりました。(単純)

「斜め移動の孤独な賢者」、ビショップ。
「決して後退しない、小さな勇者」、ポーン。
なんて、駒の説明を読むだけでワクワクしてきますー!

小川氏が描く盤上の物語に、酔いしれるべし。

猫を抱いて象と泳ぐ猫を抱いて象と泳ぐ
(2009/01/09)
小川 洋子

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2010-03-08

2月読了本

長い長い殺人 (光文社文庫)』宮部みゆき
刑事の財布、強請屋の財布、死者の財布に犯人の財布…。財布たちが目撃した、ある男女の完全犯罪とは。
語り手が財布という設定が、とにかく斬新。
魅力的なひとつひとつのストーリーが、全体のストーリーを浮かび上がらせる構成も巧みです。
再読ですが、やっぱり面白いですなぁ。あとがきでも評されていましたが、まさに「職人芸」。匠の技ですよ。
本作の「他人の心をもてあそぶことに長けている」「プライドが高い」などの犯人像は、
後の『模倣犯』につながる萌芽を感じさせました。

ロミオとロミオは永遠に〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)
ロミオとロミオは永遠に〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)』恩田陸
日本人だけが地球に残された近未来。エリートへの近道は「大東京学園」の卒業総代になること。
しかし過酷な入学試験をくぐり抜けたアキラとシゲルを待っていたのは…。SF青春小説。
この破天荒な設定についていけるかどうかで好き嫌いが分かれましょう。私は結構好きなんですが。
『ねじの回転』を思わせる、皮肉な結末も嫌いじゃないぜ!
個人的には新宿クラスメンバーの、個々の活躍がもうちょい見たかったです。
あぁ、それにしても。
唯一の女子キャラであるキョウコが作中でも呟いていますが、やっぱり「男の子っていいなぁ」。

笑う警官 (ハルキ文庫)』佐々木譲
札幌市内で起こった婦人警官殺しの容疑者は、同じ警察官である津久井巡査部長。
所轄署の佐伯は、かつてのパートナーである津久井の潔白を証明するため極秘裡に捜査を始めるが…。
うーん…。佐々木氏は直木賞を受賞されたし、映画化もされた作品なのでかなり期待していたのですが…
私的にはイマイチでした。杜撰過ぎる捜査やいきなりの射殺命令など、フィクションとはいえ
あまりにも無茶過ぎる設定に最後までついて行けませんでした。キャラクターも魅力的とは思えず。
しかも何か全体的に古くさい感じがするのはなぜ…?

その他
天童荒太『悼む人』
森絵都『風に舞いあがるビニールシート』
貴志祐介『新世界より(上・下)』

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本読み人M

Author:本読み人M
8割方活字でできています。
ミステリや時代モノといった
エンターテインメント小説が大好物。
摂取した活字の感想を
吐き出して参ります。

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