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2010-05-31

町長選挙 奥田英朗

空気を読まないことの心地よさ。

トンデモ精神科医・伊良部が赴任した離島は、壮絶な町長選挙の真っ最中だった…。

4篇の収録作品のうち3篇の主人公は、某野球チームの名物オーナーとか某IT系会社の元社長とか
エイジレスな女優さんとか、明らかに実在する人物がモデルとなっていて、ムフッと笑えます。
身勝手なメディアによってキャラクターが作られ、歪められる有名人ゆえの苦労も描かれていますが、
死に対する恐怖とか効率第一主義とか若さに対する執着とか、
有名人じゃなくても、今このテの強迫観念に駆られてる人って多いのではないでしょうか。

対する伊良部先生は相変わらずの唯我独尊ぶり。
空気読まない、言いたいことはズケズケ言う、都合が悪くなったら投げ出す、人に押し付ける、
仮病を使ってひきこもる…自由すぎます。
メチャクチャな伊良部の言動に振り回されているうちに、気がつけば執着から解放され、
いつのまにか病気を克服しているという展開は、おなじみですけれど爽快です。

割とリアルな設定の前3篇に比べ、突き抜けちゃってるのが、島を二分する選挙戦を描いた表題作。
(イヤ、もしかしたらこれにもモデルになった島があるのでしょうか?)
浮遊票を獲得しようと躍起になる両陣営。放たれるスパイ!飛び交う賄賂!そしてしたたかな敬老会w。
札束がどんどこ積み上げられる凄まじい状況の中でも、変わらずマイペース(むしろ火に油を注いでいる)伊良部がいいです。
やっぱり伊良部シリーズは楽しいですなぁ。

『チームバチスタの栄光』の白鳥、伊良部先生に似ていると思いつつ、どうしてイマイチ気に喰わなかったのか、
久々に伊良部シリーズを読んで分かりました。彼は頭が良すぎるんですな。
伊良部先生みたいに「あほう」じゃない。何せロジカルモンスターですから。可愛げがないったら。
島のオババたちも言っています。

「あほうはしょうがないのぅ」
「あほうは可愛い。気がらくでいい」

あほうと思われても気にしない。(自覚していないだけかも?)
こんなにも“人の目”“世間の目”から自由な人が居ましょうか。
こんな彼だからこそ、周囲との戦いに疲れた、あるいは周囲とのバランスを取ることに疲れた人たちを
治療することができるのかもしれません。

…実際に居たら、あまり関わり合いたくはありませんが。

町長選挙 (文春文庫)町長選挙 (文春文庫)
(2009/03/10)
奥田 英朗

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2010-05-22

ふたたびの虹 柴田よしき

心もお腹も満たされる、小さな謎のアラカルト。 

オフィス街の片隅にある小粋な小料理屋「ばんざい屋」。独身のサラリーマンやOLに密かな人気があったが、
女将の吉永には他人に明かせない過去があった…。

いわゆる“日常の謎”系ミステリ。鋭い観察眼と深い考察力、そして温かなハートで真相を探り当てる女将は、
安楽椅子探偵ならぬ台所探偵というところでしょうか。
かぼちゃの煮つけや桜飯など、とにかく各編に登場する料理がおいしそうなのですよー!
こんなお店が近所にあったら、絶対通い詰めますわ。
古道具屋の主人・清水との歯がゆいくらいスローテンポな恋模様も良いですし、
随所に出てくるブロカント(古道具)のうんちくも楽しい。
一冊で二度も三度もおいしい短編集です。

『聖夜の憂鬱 ばんざい屋の十二月』
「過ぎてしまった時間は、何もなかったことには出来ないのよ」
何もなかったことには出来ない。けれど、違う意味をもたせることは出来る。
ある過去の出来事からクリスマスが嫌いになってしまったOL・真奈美。
女将の少しのおせっかいが、彼女を長年の呪縛から解き放つ。晴れ晴れと明るいラストが良いです。

『思い出ふた色 ばんざい屋の十月』
「たった四歳。その小さな澄んだ心で、真子は過去と決別し、新しい人生を自分で選んだのだ。自分で」
ある夫婦の元に、養女として迎え入れられた真子ちゃん。
「パンダちゃんのお茶碗でご飯が食べたい」と言うのだが…。
女将の推理が、その小さな背中を押し、新しい家族の絆を強めることになる。
真子ちゃんの健気さに涙いたしました。

『ふたたびの虹 ばんざい屋の六月』
『あなたといられるなら ばんざい屋の九月』
「物は、しばしば時を超える。それは素敵なことだ」
ある日、清水を尋ねてきた年配の女性。彼女が語った女将の哀しい過去とは…。
“物”を通じて届いた過去からのメッセージを受け止め、新たな一歩を踏み出そうとする女将の姿が清々しい。
穏やかで温かなラストは、その先に必ずあるはずの明るい未来を感じさせます。

(他3篇)

ふたたびの虹―推理小説ふたたびの虹―推理小説
(2001/09)
柴田 よしき

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2010-05-16

メガロマニア―あるいは「覆された宝石」への旅 恩田陸

恩田陸と行く、インカ・マヤ紀行。 

インカ・マヤの地を旅する恩田陸の紀行文です。随所に挟まれた美しい写真にうっとり。
マチュピチュは、死ぬまでに一度は行ってみたい場所なのですよ。遠いけど。
タイトルは「誇大妄想」と「古代妄想」をかけたものだそうで、紀行文と古代文明についての考察の合間に、
遺跡での、まるで白昼夢のような妄想が挟み込まれています。
くぅ~、相変わらず思わせぶりな!
この文章がどう料理され、小説となって世に出るのか…楽しみです!

作家・恩田陸の頭の中を、少ーしだけ覗けたような楽しさがありました。
…が、紀行文としてはやや物足りないかもしれません。現地の空気感がイマイチ伝わってこないというか。
かなりの強行スケジュールだったようなので仕方ないのかもしれませんが…。

でも、先日行った沖縄とはまた違う宗教観が感じられて興味深かったです。
「何もない」沖縄の聖地と、「何でまたこんな所に、こんな馬鹿デカイものを!?」と
驚かずにはいられないマヤ・インカの聖地と。

要は思いの丈なのだ。(略)
神や高次の存在に自分の思いのたけを証明するには、
より困難な、より不可能と思われる限界に挑戦することが当然だったのだろう。(略)
より自分の本気度を証明するには、マチュピチュを造ったり、
砂漠や森の中にぶっとぶような異形の巨大建造物を造るという方法しかなかったのだ。

「祈りのかたちには、人々の無意識が滲み出る」と恩田氏が書いている通り、
住まう所が違えば、祈りのかたちも違ったかたちで滲み出るものなのですなぁ。

メガロマニア―あるいは「覆された宝石」への旅メガロマニア―あるいは「覆された宝石」への旅
(2009/05)
恩田 陸

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2010-05-08

4月読了本

臨場 (光文社文庫)』 横山秀夫
殺人か自殺か事故か病死か。捜査一課調査官・倉石は事件現場に臨み、死者からのメッセージを読み取る。
短い一編の中で、悪意、憎しみ、愛情など様々な感情が描かれています。
保身と良心の間で揺れる「赤い名刺」が個人的ベスト。
倉石の人物造形も良いと思いますが、無頼というところを強調し過ぎて、不自然な印象を受ける場面も。

恋文の技術』 森見登美彦
恋する後輩に理不尽な先輩、おっぱい小学生に生意気な妹…。金沢の研究室に島流しされた男子院生との往復書簡。
本当にヘタレ学生を書かせたら森見氏に並ぶ者はいませんな。
阿呆だなぁと思いつつ、しかも小説ではなく手紙という文体で、かつ主人公が出した手紙の内容しか書かれていないのに、
スルスルと読めてしまうのは高い筆力の賜物ですな。
最後まで描き切ってはいませんが、ハッピーエンドを確信させるラストもグー。

その他
『るるぶ沖縄』ジェイティビィパブリッシングw
『沖縄(タビハナ)』ジェイティビィパブリッシングww
『日本人の魂の原郷 沖縄久高島』 比嘉康雄
『沖縄文化論』 岡本太郎
『メガロマニア』 恩田陸
 
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2010-05-04

夜のピクニック 恩田陸

もう聞こえないノイズ。

全校生徒が夜を徹して80キロを歩き通すという、北高の伝統行事「歩行祭」。
貴子は誰にも言えなかった秘密を清算するため、ある密かな誓いを胸に抱いて、このイベントに臨んだ…。

いやぁ、青春!何て青春!!
学生を主人公とした数ある恩田作品の中でも、ピカイチの青春小説でありましょう。
登場人物たちが皆しっかり者で大人っぽい、というのは相変わらずですが。貴子ちゃんは寛大過ぎるし。
高校生の時のMは、もっと阿呆で自分のことしか考えていませんでしたよ・・・。
今もたいして変わりませんが。

『ネバーランド』も青春小説でありますが、あれはMにとっては、あくまで憧れの世界なのです。
対して『夜のピクニック』は本当に正統派の青春小説。
ただ歩いているだけなのに、友人の秘めた思いを知ってしまったり、クラスメートの意外な一面を見たり、
思わず自分も素直になっちゃったり。
共学校ならではの恋バナもありますしね。千秋~忍~貴子ラインはかなり切ない!忍君は本当にイイ男だなぁ…。
内堀さんみたいな子いたいた~、とうなづいたり、
高見君のハイテンションな言動に、イベントの度にはしゃぎすぎて必ず!鼻血を出していたH君という男の子を思い出して
思わず口元が緩んでしまったり。
「こんなことあったなー」あるいは「もっと青春しておけばよかったー!」と思える作品です。

「歩行祭」なんて、理不尽で無駄な行事にしか思えないんですが、
こんな「理不尽で無駄な」ことに時間と体力を費やせるのも学生の特権ですよねぇ。

「だけどさ、雑音だっておまえを作ってるんだよ。(略)おまえにはノイズにしか聞こえないだろうけど、
このノイズが聞こえるのって、今だけだから、あとからテープを巻き戻して聞こうと思った時にはもう聞こえない。
おまえ、いつか絶対、あの時聞いておけばよかったって後悔する日が来ると思う」

もう巻き戻せない時間と、取り戻せない自分自身。
かすかな喪失感に胸が痛みつつ、読後は、まるで登場人物たちと歩行祭を歩き抜いたような爽やかさ。
名作です。


夜のピクニック (新潮文庫)夜のピクニック (新潮文庫)
(2006/09)
恩田 陸

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Author:本読み人M
8割方活字でできています。
ミステリや時代モノといった
エンターテインメント小説が大好物。
摂取した活字の感想を
吐き出して参ります。

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